ふくおかの名宝 《名刀二振との再会》
大阪で居合と出合い稽古を続けてきましたが、仕事の都合で福岡に戻ったため、今は出身地の福岡市で稽古を続けています。今回は福岡の秀逸な名宝をご紹介します。
かつて福岡藩があった頃、黒田家には数々の名宝が有りました。その一部が開館二〇周年を迎える福岡市博物館で「ふくおかの名宝-城と人とまち-」展覧会で展示されました。私が是非とも見たかったのはいずれも国宝の「日光一文字」と「圧切長谷部」の二振で、京都市博物館での展示を拝覧して以来の再会となりました。

「日光一文字」は私の好きな名刀で、日光二荒山神社から北条早雲に渡り北条家の宝刀となり、秀吉の小田原攻めの功績により黒田孝高(官兵衛)に贈られた名刀です。刃長67.8cm、反り2.4cmと反りは緩やかで刃文は変化に富んだ華やかな乱れがあり、さすが備前福岡一文字派の最高傑作でした。もう一つの「圧切長谷部」は織田信長の所持していた“振り下ろすことなく人を押し切った”ほどに切れ味鋭いと云われた名刀で、信長が官兵衛に中国計略の恩賞として与えたとも、羽柴秀吉を経て黒田長政に贈られたとも伝えられています。刃長64.8cm、反り0.9cmとあまり反りは無く棒樋が通って刃文は小乱れから鎺元で大きく乱れていて、本当に“へし切”れそうな迫力を感じました。その他に黒田家といえば官兵衛と長政の甲冑も有名で、こちらも拝覧しました。

この二振は今時のPCゲーム「刀剣乱舞」のキャラクターにもなっているので、来場者にはそのファンと思しき若い女性が結構いて盛んに刀の写真を撮っていました。逆に男性は少なく年齢層も高かったのは少し残念でした。そしてふと思いました。このように最近「刀剣乱舞」で日本刀、そして今年「鬼滅の刃」で剣術が注目されているにも関わらず、その二つを兼ね備えている居合道に注目が集まらないのは何故だろう…居合や剣術に社会がもっと興味を持って良いはずなのに…。
名刀二振に再会して高揚した気持ちが次第に落ち着いて、日本刀は博物館にこれからも残るけど、日本の素晴しい伝統である居合道はどうなる…居合道を志す人を増やして次の世代に伝えていかなくては…あらためてそう思いました。